中国における都市と農村の収入格差調査 [現代中国]

 8年ほど前ですが、中国社会科学院経済研究所の『中国における都市と農村の収入格差調査』を要約した報告が載っている雑誌を購入しました。それをご紹介しようと思います。
 まず、次の表をご覧ください。

  年平均収入(表1) 元
    都市 農村 都市/農村
2002年 8,038 2,588 3.1
1995年 4,410 1,564 2.8

ジニ係数(表2)
  都市 農村 全国
2002年 0.319 0.366 0.454
1995年 0.280 0.381 0.437

 表1でわかるように、中国の都市と農村の収入格差は2002年で3.1倍になっていますが、これは世界でも最高の数字だそうです。しかも、これはあくまで貨幣収入の格差なのであり、社会保障・教育費補助などを考慮したら、実質的には6倍に達すると主張する研究者もいるとのことです。
 表2のジニ係数とは「収入の平等性」を示す指数(0≦ジニ係数≦1)で、この係数が高ければ高いほど格差が大きいことを表します。
 1995~2002年の間に、都市ではその数値が上昇し、農村では逆に下降しています。つまり、都市では富裕層がより豊かになり、農村では富裕層が減っていることを表しているわけです。 しかし、報告者は、これは農村全体が貧しくなったということを意味せず、都市の、とりわけ都市富裕層の収入増加のスピードが全国平均や農村のそれよりも急速であることを示していると、言っています。

 それでは、なぜ農村ではジニ係数が下降したのでしょうか。 これについて、報告者は次の三つの理由を挙げています。 
 一つは、農村戸籍の都市戸籍への移転です。農村の中で都市戸籍への移転ができる層は比較的裕福な階層と考えられますから、このことにより、農村の富裕層が減少したというわけです。
 二つめは、出稼ぎ農民の増大です。一見、このことは農村内部の格差を拡大させる原因のように思われますが、それは一部の者だけが出稼ぎに出た時代の話であり、現在では逆に農村の貧しい層にも現金収入を獲得する機会を与えたことになるわけです。 
 三つめは、税制改革です。以前の税制は報告者の用語を使うと累進課税とは反対の「累退課税」ということだそうです。 つまり、豊かな者にも、貧しい者にも一律の「平等な」課税額が義務付けられており、これが実質的な不平等を招いたというわけです。 この「不平等な平等課税方式」が改正されたことにより、農村内部の経済格差がやや縮小されたのです。 どうやら、報告者は、農村の収入平等化を「貧しさの平等」と捉えるよりも「豊かさの平等(への第一歩)」と捉えているようです。

 さて、報告者の言わんとすることをまとめてみると、こうなるでしょうか。
 農村も都市も豊かになりつつあることは間違いない。しかし、そのスピードにはあまりにも格差がある。これが世界で一番の都市と農村の格差を招いている。
※ 雑誌《財経》2004年第3・4期(2月20日発行)(中国証券市場研究設計中心刊) 李実・岳希明(中国社会科学院経済研究所研究員)《中国城郷収入差距調査》を要約。
(HN)


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